環境ボランティア体験記 イン フレーザー

その1 福本美香さんの場合(写真提供はご本人)2000年12月12日〜2001年1月4日

私は昨年の12月12日から今年の1月4日までの約3週間をオーストラリアのフレーザー 島でボランティアとして、国立公園のレインジャーの仕事を手伝うという、貴重な体験をしてきました。
レンジャーの仕事は多岐に渡り、私が手伝っただけでも、雑草の除去、道路修理、 この時期、産卵のために上陸する海カメの調査、ブッシュファイアーの消火活動、ま た、意外に人間相手の仕事も多く、観光客の使うトイレの掃除や修理、観光客の安全 管理やキャンプの許可証の確認、観光客の残したゴミ拾いなどがありました。これら の仕事を簡単に紹介します。

まずは、道路修理と雑草の除去。どちらも炎天下の下での作業なので、かなりきつかったです。熱帯雨林の雑草は、とても大きくて、強く、日本の雑草のように指先で という訳にはいかず、スコップで掘り返し、両手に満身の力を込めて抜く重労働になりました。
最初、「国立公園の自然の森の中で雑草とそうでない草は、どう区別しているのだろう?」と疑問に思いましたが、レンジャーによると、 この雑草は 元々南アフリカから鑑賞用として持ちこまれたものが、自然の中で増えすぎてオーストラリア本来の植物生態系を壊しているということでした。
オーストラリアでは、こ のような移入動植物が多く、問題になっているそうです。 どちらの仕事も体力的には重労働で大変でしたが、 自然の中で、周りには珍しい昆虫 や鳥、時には1メートル近くもあるオオトカゲが見られるので、楽しみながらできまし た。

ビーチやキャンプ場でゴミ拾いをしている時は、こんなにきれいな島をどうして平気 で汚せるのだろう、と憤りを感じました。 また、お茶のペットボトルなど、日本人の 残したゴミを見つけた時には、同じ日本人として、本当に恥ずかしく思いました。

私にとっての一番の思い出は、やはり、海カメ調査です。
12月17日から31日までの2 週間は毎晩9時から明け方の4時まで車でビーチを走りながら産卵に上がってくる海カメを 探しました。フレーザー島に上陸するのは、アオウミカメとアカウミカメです。
もし、カメを見つけたら、車から降りて、 真っ暗な中を月明かりだけを頼りにカメに近付き、産卵が始まるまで、カメに見つからないように待ちます。
カメはとても光に 敏感なのです。 産卵が始まれば、カメは30分程度はじっとしているので、その間に甲羅のサイズを測ったり、カメの状態を見たり、個体識別のために前ひれにつけてある標識を記録したりします。
*写真はアカウミガメ

そして、産卵場所が安全でない場合(波が届きそうだった時)は、卵を全て安全な場所に移し替え、ディンゴやオオトカゲから守るようにネットを被せて埋め戻します。 海に戻る途中のカメを見つけた時は大変でした。

嫌がるカメを無理に引き止めて、全ての作業をするのです、体重100キロのカメ 相手では、大人でも引きずられてしまいますし、 カメの怒った顔はかなり迫力があって、怖かったです。
*写真はアカウミガメの卵を安全な場所に移動中の美香さん

怪我をしたアオウミカメを見つけたこともありました。 このカメは両方の前ひれをサ メに食いちぎられて、浜に打ち上げられていました。4人がかりで室内に運び込み一 晩世話をしたのですが、残念ながら翌朝死んでしまいました。 カメが死んでしまったのは残念でしたが、私にとってはウミカメの解剖にも立ち会えてとても貴重な経験になりました。

この海域にはサメが多いそうで、 私も海で泳ぐ時 にはサメには充分に注意するようにと言われていました。成長した海カメの天敵はサメと人間だそうです。

オーストラリアに産卵に来る海カメはここ数十年でかなり減少しているそうですが、 この原因に私達日本人も無関係ではないようです。 それは、日本の遠洋漁業の網に海カメが絡まって溺死してしまうことが多くあるからだそうです。 この網による被害は 海カメだけでなく、他の海生哺乳類もそうですし、今、絶滅の危機にあるアホウドリも足を絡ませて、死んでしまうことがあるそうです。
また日本にも海カメは産卵に上陸するのですが、その産卵場所の環境破壊も海カメの個体数減少に大きく影響しているのです。

今までの、移入動植物の問題や、観光客のモラル、海洋生物と日本漁業の関係などに ついての漠然とした問題意識がこの3週間、実際に自分で体験することにより、 とてもはっきりとした、実感を伴ったものになりました。

オーストラリア旅行中に出会ったフランス人が「こんなにきれいなところがあるなんて、今まで想像もしたことがなかった。」というくらい美しいフレーザー島で3週 間もボランティアをして、レンジャーの方々や他のボランティアと過ごし、 本当に良い、貴重な経験になりました。  
*写真左はボランティア仲間と。左端が美香さん

また、機会があれば、是非行きたいと思ってます。
今度行く時は、英語をもっとしっかり勉強して、色々なことを話し合えるくらいにして、 たくさんのことを吸収しに行きたいと思います。